
交通事故死傷者ゼロをめざして。
ドライブレコーダーで
命を救う新規事業の裏側
事業開発
新事業企画部
M.K

交通事故死傷者ゼロをめざして。
ドライブレコーダーで
命を救う新規事業の裏側
事業開発
新事業企画部
M.K
2012年にトヨタ自動車に入社した小池 優仁は、新事業企画部 事業開発室 BE creation グループで新たな領域に挑戦する事業開発に携わっています。「誰のためか」を大切に現地現物主義で仕事と向き合う小池が、自らが提案した新規事業「DRIVE RECORDER119」のやりがいや醍醐味を語ります。
新規事業創出の
スキームから誕生した、
DRIVE RECORDER119

私は、現在トヨタの新事業企画部 事業開発室に所属しています。当室では「BE creation」というトヨタ全社員を対象とした社内新規事業創出のスキームを運用しています。そして、クルマの企画や関連事業にとどまらない領域での新規事業開発が私たちのメインミッションとなっています。
私が取り組んでいるのは「DRIVE RECORDER119」というプロジェクトで、消防の119通報における課題解決をめざしたサービスです。交通事故などが発生した際、通報者の気が動転している場合もあり、現場状況の正確な把握が難しいことがあります。令和5年には全国で年間1,025万件の通報がありました。これは実に3秒に1回のペースで通報が入っている計算になります。
当プロジェクトでは、通報を受けたオペレーターが、通報だけでは現場状況の把握が難しいと判断した際に、付近を走行している車両のドライブレコーダー映像をリアルタイムで確認できるシステムを開発、運用しています。
現在、サービスの提供を開始している堺市消防局では約800台、実証実験を行っている京都市では約500台の車両にご協力いただいています。主にトラックやバス、タクシーなどの車両に専用のドライブレコーダーを搭載しています。
実際の活用事例として、高速道路でのトラック横転事故があります。映像確認によって片側車線の通行が可能だとわかり、部隊の過剰な出動を防止できました。
また、高齢者の交通事故では、ドライブレコーダーの映像から道路上で倒れている方の重篤な状態を確認し、ドクターカーを即座に要請。医師による医療介入を約15分早めることができました。その他、山火事の事例では映像から火災の規模を確認し、初期段階で出動隊を増やし、被害を最小限に抑えることができたと聞いております。
このプロジェクトを提案したきっかけは、私自身の経験にあります。大学時代にテレビ局の報道部門でアルバイトをしており、交通事故や火災の現場に何度も立ち会ってきました。
また、高校時代の友人が現役の消防士であり、消防の現場における課題を身近に聞く機会がありました。その後、多くの消防関係者から話を聞く中で、119通報だけでは把握できない現場状況の課題が浮き彫りになり、それを解決するソリューションとして本サービスの開発に至ったのです。
トヨタの新規事業創出において大切にしているのは、「誰のためか」という視点とビジネスとしての収益性や継続性の両面から事業を評価することです。社会課題の解決と事業性を両立させることを意識する。そして、現地現物やお客さま視点を徹底し、トヨタの技術力や資産を活用しながら新たな価値を生み出していくことを心がけています。
トヨタの中で、
できることがある。
これまでの経験が線で
つながった瞬間

これまでの道のりを振り返ると、予想もしなかった形で経験が活きていることを実感します。新卒で入社した後、車両の商品企画部門に配属され、約7年間にわたって小型車やスポーツ車両の商品企画を担当しました。
とくに印象に残っているのは、コネクティッドカーと呼ばれる通信モジュール搭載車両の企画です。コネクティッドカーでは、車両データや位置情報を活用することで、ドライバーの安全性や利便性を向上させることができます。また、あおり運転が社会問題化する中で、ドライブレコーダーの普及に関する世の中の流れも感じていました。
社会人5年目頃には、会社を辞めて起業することも考えていました。大学時代から自ら新しいことにチャレンジしたいという想いを持っており、大企業の中で仕事を続けていくか、迷いを感じていたのです。しかし、2019年に会社から新事業部門への異動打診がありました。
以前、起業について相談した際に上司から「トヨタの中でもできることがある」と言われたことを思い出し、新たな領域に進むことができるチャンスだと捉えました。異動後は、ルナクルーザーという月面有人探査活動に必要な有人与圧ローバーのプロジェクトや、小型電動モビリティのビジネス化に向けた実証実験など、さまざまな新規事業に携わりました。
そして、先にも述べたBE creationに制度運営の事務局として関わる中で、それまでの商品企画での経験を活かし、2020年度にDRIVE RECORDER119の元となる案を提案しました。書類審査と面談審査を経て採用された後、最初に取り組んだのは消防の方々からの徹底的なヒアリングです。消防組織の基本的な構造から、現場が抱える課題まで一つひとつ理解を深めていきました。
とくに印象的だったのは、119通報だけでは現場状況の把握が難しく、現場に到着してから装備を見直すことがあったり、救急車が足りないケースもあったりすること。通報者からすると一生に1回あるかないかの通報であり、非日常の出来事が起きている中、なかなか冷静に通報することが難しいということでした。これらの課題を把握した後、ドライブレコーダーを活用した解決策を提案し、消防の方々からフィードバックを得ながら技術的な実現可能性や必要なリソースを検討していきました。
「現地現物」で真摯に向き合い、
社内外を超えたチームに。
最も重要なのは仲間の存在

DRIVE RECORDER119プロジェクトにおいて、堺市での実証実験が重要な転換点となりました。さまざまな行政との協議の末、堺市での実証実験が決まったのですが、実績のない状況での導入は大きな困難を伴いました。とくに、現場のオペレーターの方々の理解を得ることに最も苦労したのを覚えています。
システムの導入当初、マニュアルを作成して何度も説明会を実施したものの、最初の1週間は、そこにモノがあるだけでほとんど使用されない状況が続きました。そこで、私は毎週堺市に通い、現場のオペレーターの方々と直接コミュニケーションを取り、システムの使いにくい点や改善すべき点について詳細な意見を聞いて回りました。そして、指摘された改善点については1週間以内の迅速なフィードバックを心がけました。
このような地道な取り組みを続け、実績が増えていくと、現場の空気も変わっていきました。システムを使っていただける件数が増え、主体的に関わってくれる方々も出てくる中で、「ワンチーム」として課題に取り組める喜びを実感するようになりました。
また、このプロジェクトは、街中の映像という個人情報を扱うため、非常に慎重に進めなければなりませんでした。システム開発の予算もどんどん大きくなり、何度も、さまざまな課題に直面し、「今日でプロジェクトが終わるのではないか」と感じたことを覚えています。そういう時には、周囲の方々が力になってくれました。自分の業務の枠を越えて協力してくださる方々のおかげで、プロジェクトを前に進めることができたと感じています。
こうした経験を通じて、新事業を進めていく上で最も重要なのは、「実現したい未来に共感してくれる仲間がいろんな職場にいること」だと学びました。トップダウンで物事を進めても現場がついてこなければうまくいかないため、実際にプロジェクトを動かす当事者の方々に同じ思いを持っていただくことが大切です。
「現地現物」の本当の意味を、このプロジェクトを通じて理解することができました。堺市での成功体験は、その後の京都での展開をスムーズにする大きな要因となり、新規事業展開における実績づくりの重要性も実感しています。
「やりたい」を形にできる場所。
トヨタの基盤をもとに、
新たな仕組みづくりの起点へ

新規事業を進めていく中で、トヨタならではの強みを実感する場面が多くありました。社会システムを構築するにあたって、大企業であるトヨタが先導することへの期待や信頼は大きく、他の企業の参画を促すためにも重要な役割を果たしていると感じています。
また、トヨタには、長い年月をかけて、諸先輩方が築き上げてくださったブランドへの「信頼」があります。社外のたくさんの方にもサポートをいただけたのは、こうした財産があったからこそ。その信頼を積み重ねられるよう、私自身も成長していきたいと思うようになりました。
今後の展望は、DRIVE RECORDER119プロジェクトの拡大です。現状は後付けのドライブレコーダーを使用していますが、将来的には保険会社などが販売している通信型ドラレコや、お客さまのドライブレコーダー、多くの方々の協力を得て、拡大させていきたいと考えております。そして、個人としては今回の経験で得た学びをBE creationグループに還元し、今後生まれる新規事業の創出に貢献していきたいです。
新規事業部門は個人の裁量が大きく、自分がやりたいことを実現できる組織だと実感しています。このような環境で活躍できる人材としては、自分の信念を大切にしつつも、あらゆる状況に適応できる方が望ましいです。大企業ではルールを重視する傾向がありますが、新規事業では想定外の事態も多く柔軟な対応が求められます。また、リスクを極限まで減らしながら進めていく能力や諦めない粘り強さも重要です。
そして、どんなプロジェクトも1人でできることには限界があります。だからこそ、周囲を巻き込む力、応援してもらえる人柄も大切な要素になってきます。私自身、当プロジェクトも多くの仲間たちや現場の方々の支えがあってここまで来ることができました。
最後に、忘れてはならないのは、これら新規事業はクルマづくりという本業があってこそ成り立っているということです。現場の方々が一台一台丁寧にクルマを製造し販売してくださっているからこそ、私たちは新規事業に挑戦できています。この感謝の気持ちを忘れずに、今後も新たな価値創造に取り組んでいきたいです。
※ 記載内容は2025年8月時点のものです
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